ロータリークラブの会費は必要経費か
             (個人事業主)
                 平成28年7月19日国税審判所裁決 

 ータリークラブの会費

 本件会費は、事業と直接関係し、事業遂行上必要であるとは認められないから、事業所得の金額

計算上必要経費に算入することはできないとした事例

 ロータリークラブの入会金や会費の取扱い

 ロータリークラブの入会金や会費等は、個人事業者と法人では税務上の取扱いが異なります。

 個人事業者の場合

 ロータリークラブの会費等は、必要経費と認めることはできないと判断した裁決がいくつかのあります(平成28年7月19日他)。国税審判所の判断は一貫しており、「本件クラブの会員として行う活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動はいずれも営利性、有償性を有しておらず、自己の計算と危険において報酬を得ることを目的として継続して経済活動に該当するものではない。」「必要経費に算入されるのは、それが事業活動と直接の関連を有し、当該業務の遂行上必要なものに限られると解するのが相当であり」、「家事費との識別が必要であり」、「私的な活動に過ぎない」から「直接費用であると解することはできない」と判断しています。

 法人事業者の場合

 ロータリークラブの会費等は、原則として「損金」に算入されます。

 法人税法基本通達(9-7-15-の2)

(ロータリークラブ及びライオンズクラブの入会金等)

 法人がロータリークラブ又はライオンズクラブに対する入会金又は会費等を負担した場合には、次による。(昭55年直法2-15「十六」により追加)

(1) 入会金又は経常会費として負担した金額については、その支出をした日の属する事業年度の交際費とする。

(2) (1)以外に負担した金額については、その支出の目的に応じて寄附金又は交際費とする。ただし、会員たる特定の役員又は使用人の負担すべきものであると認められる場合には、当該負担した金額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。


 〔裁決の要旨〕

1 本件は、弁護士業を営む請求人が、ロータリークラブの会費を事業所得の金額の計算上必要経費に算入して申告したところ、原処分庁が、当該会費は必要経費に算入されないとして所得税等の更正処分等をした事案である。

2 弁護士は、弁護士法第3条第1項に規定する法律事務を行うことを職務とし、その対価として報酬を得ることで事業所得を得ているのであるから、弁護士が弁護士としての地位に基づいて行う活動のうち、所得税法上の事業所得を生ずべき業務に該当する活動とは、事業主である弁護士がその計算と危険において報酬を得ることを目的として継続的に法律事務を行う経済活動をいうことになる。 3 ある活動が当該弁護士の所得税法上の事業所得を生ずべき業務に該当するか否かは、当該弁護士の主観によって判断されるのではなく、当該活動の内容等を総合考慮し、社会通念に照らして客観的に判断されるべきものであると解するのが相当である。

4 本件ロータリークラブは、定款に従って、各種の奉仕活動を行うとともに、会員同士の親睦を深めたり、講演や卓話を通じて教養を高めるなどの活動をしていたものと認められる。そして、請求人の本件クラブの会員としての活動の主なものは、①例会への出席、②親睦会への出席、③奉仕活動への参加及び④講演会への出席であり、請求人がこれらの活動を行うことで報酬を得ていたなどの事情は特に見当たらない。

5 本件クラブの活動内容を踏まえ、請求人が本件クラブの会員として行う以上のような活動を社会通念に照らして客観的にみれば、その活動はいずれも営利性、有償性を有しておらず、請求人が弁護士としてその計算と危険において報酬を得ることを目的として継続的に法律事務を行う経済活動に該当する央ものではないというべきである。

6 そうすると、本件各会費は、請求人が本件クラブの会員であることに伴って支出したものであるから、請求人の所得を生ずべき事業と直接関係し、かつ、当該事業の遂行上必要であるとは認められない。したがって、本件各会費は、事業所得の金額の計算上必 要経費に算入されない。

7 請求人は、所得税法第37条第1項に規定する「所得を生ずべき業務について生じた費用」の解釈について、原処分庁の解釈は、東京高裁判決(平成24年9月19日)が判示するとおり、法令の文言の解釈を逸脱している旨主張する。しかし、高裁判決は、弁護士が、弁護士会等の役員等として行う活動で支出した費用の一部について、弁護士会等の活動が事業所得を生ずべき業務に密接に関係していることなど、当該活動費用の負担の実情等を踏まえ、必要経費に算入することを認めた事案であって、かかる事情を認めることができない本件とは事案を異にするもの

といわざるを得ない。

8 請求人は、弁護士業においては、顧客獲得のための積極的な営業・広報動等を広く展開することが重要であり、本件クラブの会員であることは、業務遂行上必要かつ極めて有益な要因である旨主張する。しかしながら、本件クラブの会員であることで、請求人が主張するような側面があったとしても、これは、会費を支出することの直接の目的ではなく、飽くまでも間接的、副次的に生ずる効果にすぎないとみるのが相当であるから、会費を支出することが、弁護士業務の遂行上必要であるということはできない。

9 請求人は、法人が支出するロータリークラブの会費は経費性が認められている旨主張する。しかし、私的な消費生活を行う個人と、それを観念できない法人とでは、支出に関する取扱いを異にすることは、所得税法及び法人税法におけるそれぞれの課税所得の計算構造をみても当然に予定されているものというべきである。